うつ=現代型(2)
=カウンセリングに参加しない患者は治るのが遅れる
=デイケア・プログラムを提供するクリニック(1)
朝日新聞で「患者を生きる」という連載記事が掲載されている。今「うつ」についての、連載が続いている。8月22日ー27日は、「現代型」。要点をご紹介します。下記の続きです。
「現代型」といわれるうつ病。「まじめな人」がなりやすい従来型のうつ病とは違い、「会社が悪い、上司がひどい、親の理解がない」などと他人のせいにし、社会のルールをストレスと感じるタイプ。
精神科のクリニック「メディカルケア虎ノ門」で、復職のためのデイケアに通ううつ病患者の例。
矢田さん(39)=仮名=がはじめてうつ病になったのは、十数年前。父親のすすめで、大手都市銀行に入社、はじめは順調だったが、上司が異動してから、環境が変わって、うつ病に。
抗うつ薬の服用とカウンセリング。3年ほど続いて、退職して、人材紹介会社に登録。00年6月、情報サービス会社に再就職。
最初の2〜3年は、周囲も驚くほど成果を出した。だが、その後の人事異動で、新しい上司とウマが合わず、衝突するようになった。
矢田さんは仕事の計画を自分で組み立て、一人で進めたいタイプだったが、上司は重箱の隅をつつくように細かく注意してきた。上司との関係が悪くなると、同僚たちも足を引っ張り始めたような気がした。「ねたみを買っていたんだと思います」
朝起きられなくなったり、仕事の能率も落ちてきた。うつ病の再発である。
05年4月、「メディカルケア虎ノ門」を受診した。矢田さんは必死で訴えた。
「五十嵐院長は「ずいぶん大げさだな」と思った。他人を非難しがちな「現代型うつ病」の傾向があると診断した。休職が必要とは思えなかった。」
矢田さんは、2か月休職。院長からは、「復職デイケア」に参加するよう勧められたが、「自分はそこまで重症ではない。そんなところに行くのは恥ずかしい」と断った。」
だが、復職が近づくたびに挫折するので、休職をさらに3カ月延長して、「デイケアに参加することを渋々承知した。」
しかし、顔を出しても、それでも、用意されたプログラム(ヨガ、運動プログラムなど)に参加しない。
「格好悪い姿を見せたくない」と一切参加しなかった。」
プログラムには参加せず、資格をとるための本を持ち込んで読むが頭にはいらない。無断欠席も何度かした。1カ月もこんな状態が続いた。
1か月、見学して、仕方なく、始めた。
年末に会社と復職条件について話しあいを始めた。だが、
「完治するまで戻らないでくれる?」
「その晩はどん底まで落ち込み、会社を辞めようと思った。だが、五十嵐院長から「今決めることはない。戻って働いて、それでも駄目だったら辞めなさい」と諭された。退職を思いとどまるのが精いっぱいだった。」(朝日新聞 8/23-4/06)
前の記事で、「ひどいカウンセリングだ。3年間、何も助言しない。」と書いたが、このように、うつ病の患者に、修正した方がよい心のもちかたがある場合(認知療法では、固定観念や認知のゆがみがあるとする。マインドフルネス心理療法では、柔軟性の欠如および脳神経生理学的変調があるとする)があるので、そこを変えないと治らないとか、再発を繰り返すことが多い。薬物療法だけの寛解は、そのようになる割合が高い。カウンセリングも、障害によっては、話を聞くだけのカウンセリングでは、治療期間がながびくことがあるのは、この例でも理解できるはずだ。
当協会でも、グループ・カウンセリングを行なうので、全員いっしょに、簡単な実習を行なう。そういうことをするのが、「格好悪い」「他の人といっしょは嫌だ」「呼吸法などで治るはずがない」と思って、グループ・カウンセリングに参加しないクライアントもいるようだ。参加しても、真剣にやろうとしない態度の人もみられる。「現代型うつ病」の人かもしれない。呼吸法やある種の運動は脳神経生理学的な変化をもたらす。
真剣な人は、3か月で完治に近くなる人がおられる一方、初回カウンセリングしか来ないクライアントもいる。カウンセラーの方が、治す方法に詳しいのだが、クライアントが、自分の考えで、選択・排除してしまう。後者は、そういう生き方が、うつ病を維持させてしまうのに、そのことさえも気がつかないところもあるだろう。治すには、自分が真剣に自分の心にたち向かうことが必要である。面接を受けること、他者にあうこと、課題をすることは面白くはない。そのような心理を洞察して、自分は何を嫌がるか、他人に嫌がることをしてこなかったか、どうすれば、嫌なこと(それは、自然である)があっても、自分の症状が長引かない方法で克服できるかを身をもって訓練しなければ完治すること、再発を防ぐことは難しいだろう。
うつ病は、過去・将来・環境・自己の否定があるので、その否定的な思考パターンを変えていく治療プログラム、心理療法のカウンセリングさえも、逃避するならば、治ることが遅れる。現代型うつ病がふえているようだと思う。