うつ病・心理的相互交流

 =他者との交流は、前頭前野の働き

 うつ病は、セロトニン神経だけの変調ではなさそうである。前頭前野の変調もある。今回は、この前頭前野の「心理的相互交流」機能を指摘している研究をみたい。  社会的能力や心理的相互交流とは、次のような働きである。前頭前野が関係している。  この働きは、眼窩前頭葉皮質(OFC)、内側前頭前野(MPFC)、背内側前頭前野(DMPFC)、背外側前頭前野(DMPFC)などと関連がある。  ある種の精神障害(自閉症や統合失調症など)に、これが障害されている場合があると指摘している。うつ病(気分障害)との関係をみると、寛解になってもうつ病者には、ToM能力が欠損しているという。  うつ病の人が、薬物療法などで寛解に至っても、なお、前頭前野に脆弱性が残っていて、この能力の回復が不十分で、無作法なことをする可能性があり、自分でもコミュニケーションを回避する傾向があることを自覚する。そのことにより、すぐに、復帰することを困難にしているであろう。復帰までに、ToM能力の回復を支援する必要があることを示唆する。復帰までに、前頭前野の回復も必要であるから、完治までに、しばらくかかりそうである。うつ病の人の社会復帰のために、こういうことも配慮した支援が望まれる。セロトニン神経も、薬物療法では、シナプス部位での、再取り込み阻害の作用しかなく、縫線核の働きは、低いままだとも言われていて、うつ病は、寛解になっても、脆弱性をあちこちに残しており、復帰には、配慮が必要であると思われる。
 そこで、心理療法の一貫として、しばらく、居場所に通うとか、理解ある作業所、企業などに通うなどして、やや多くの他者との心理的相互交流のリハーサルを行うことがいいのではないかと思う。そういう場所づくり、カウンセリング所と作業所との連携をはかることで、心理的相互交流をはかり、復帰の準備とするのがよいであろう。