認知修正を用いないマインドフルネス心理療法
認知療法は、うつ病の心理療法として開発された。認知療法は、その人の認知(思考の内容)がおかしいという理論で、セラピストは、患者の毎日の思考、感情、行動を記録させて、反証を考えるよう指導する。3カラムの表や7カラムの表が使用される。
だが、認知療法では治らないうつ病や不安障害があり、そういう患者の方のために、マインドフルネス心理療法が開発された。
マインドフルネス心理療法は、認知を変える技法は重視しない。一日を振り返るようなことをしない。過去をあえて振り返る手法は重視しない。
「マインドフルネスは、この思考と、今までと違うかかわり方をすることにはっきりと焦点をあてる。それはそれらを支持する/反する証拠を集めることや、そこから距離をとるための第一段階としてそれに言い返してみることを強調しない。」(1)
認知療法は、過去(今日、昼間のこと)の思考を振り返る。だが、マインドフルネス心理療法は、そういう過去は重視しない。思考が起きた瞬間に、思考を自分の種々の精神作用のプロセス全体の一部にすぎないと理解して(そのように覚悟できるまで、課題の練習がある)、あまり重視せず、不快な思考でも、受容して、観察して、自分の重要な人生目標(願い、価値)実現に貢献しない思考であれば、思考にふりまわされて、一時のがれの行動(または、逃避、非行犯罪)などせず、自分の価値(願い)を実現する行動(仕事、あそび、勉強、会話など)に意識を向ける。すなわち、現在、刻々と、処理していく。あとで、思考内容を思い出して、反論するような方法ではない。
「その代わりに、人々に違う心を、つまりそれらに影響を与える異なる性質の注意を向けるようにすすめる。すなわち、それがどこから来たかわからないものの、おだやかさと受容の態度で認め、扱う必要のあるパッケージ全体の一部として観察する、ということである。このようなやり方で、まるで思考が真実をいっているかのように扱うことに費やす努力を減少できる。」(2)
現在、現在、と、瞬間に観察し、受け入れ、価値実現のことに意識を向けていく心のスキルを身につけるために、呼吸法や運動などを多く用いる。それが、セッションでのトレーニングであり、次回までの課題である。不快の思考(さらに、感情、身体症状、衝動なども)を短時間、観察し、受け入れて、解き放して、価値実現のこと(仕事や遊び、呼吸、運動)に意識を向けていくことができれば、長く感情におおわれていることが少なくなって、精神疾患は改善に向かう。
(注)
- (1)「マインドフルネス認知療法」北大路書房、201頁
- (2)同上、201頁。
呼吸法や運動には、変調を起こしている前頭前野、セロトニン神経、HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)などの変調を修復する効果があるようで、心理的な受容態度の変化のほかに、症状も軽くなることが多い。たとえ、症状が回復しなくても(末期がん患者の痛みや、死期が近いのではという不安の思考による感情など)、受容の心ができる。たとえ、症状がとれなくても、死の不安がよぎっても、そのようなものと闘わず、受容して、自分の価値あるものに意識を注ぐことによって、質の高い人生を送ることができる。ターミナルケアにもマインドフルネス心理療法は活かされる。