また、マインドフルネス心理療法の翻訳書
アメリカでは、認知療法の先をゆくマインドフルネス心理療法が10年前から
発展しています。世界にひろまっているそうです。
「マインドフルネス&アクセプタンス
ー認知行動療法の新次元ー」が、2005年9月に翻訳出版されました。13章にわたって、多くの心理療法者が、それぞれのセラピー(心理療法プログラム)の概要を発表していました。
この本では、概要しかなく、詳細がわからなかったのですが、13章のうち、次の3つは、さらに、詳細な翻訳書が別々に出版されました。
-
第1章 アクセプタンス・コミットメント・セラピー(ACP)
うつ、精神病、薬物乱用、慢性疼痛、摂食障害、仕事に関係するストレスなどに効果がみられた。
-
第2章 弁証法的行動療法(BDT)
境界性パーソナリティ障害の心理療法。
-
第3章 マインドフルネス認知療法(MBCT)
こうして、すごい勢いで、アメリカの文献の翻訳が始まったのです。まもなく、認知療法は、時代遅れとなるのでしょう。MBCTの翻訳書は「マインドフルネス認知療法」(北大路書房、2007年9月)ですが、その中で、著者は、次のように書いています。まだ、心理療法の名称に「認知療法」をつけていますが、数年後には、もう、認知療法ではなくなりそうです。
「あと数年もすれば、著者らは、これまで行なってきた認知療法そのものからは完全に離れていくことになるだろう。」
認知療法は、たしかに効果が大きかったが、それよりももっと効果がすぐれているのがマインドフルネス心理療法ということでしょう。認知療法を提供する時に、セラピストは「認知の内容」を修正するように患者に助言するのだが、治った患者は、認知の内容が変わらずに、関係性を変化させているというのだ。
「しかしここで、CBTを実施した体験やこれまでの理論的分析の結果を踏まえて、他の可能性が指摘できる。表向きは、CBTが思考内容を変化させることは明らかであろう。しかし、その裏でCBTは、患者と、彼/彼女らがもつネガティブな思考や感情との関係性を変化させているのである。具体的には、CTにおいて患者は、ネガティブな思考そのものに気づき、その正確さや適切さについて評定することを繰り返すことで、しばしばネガティブな思考や感情に対する視点を変化させる。
思考を、絶対的に正しいものであるとか、重要な自己の属性を反映したものであると捉えるのではなく、ネガティブな思考や感情は、必ずしも現実や自己の本質を正しく反映しない、心の中で生まれては消えてゆくささいな出来事にすぎない、と捉えることが可能となるのである。」(「マインドフルネス&アクセプタンス
ー認知行動療法の新次元ー」76頁)
そうだとすれば、治療法がずれている。認知内容の修正で治るのではなくて、関係性の変化で、うつ病が治るのであれば、どのような治療法が、ズバリ、関係性を変化させるのか、さがしているうちに、マインドフルネス、アクセプタンスの手法にめぐりあったのである。うつ病にマインドフルネス心理療法が効果があることがわかり、次々と他の精神疾患や障害の治療法がマインドフルネス技法を取り入れて、発展している。境界性パーソナリティ障害のための心理療法にマインドフルネスを導入して「弁証法的行動療法」が完成した。
うつ病も、アメリカでは、認知療法ではなくて、マインドフルネス心理療法(いくつかのプログラムがある)が適用されていくだろう。
日本では、あと、10年かかるだろう。マインドフルネス認知療法(MBCT)のカウンセラー育成の講座(9日間)が、アメリカで、来年から始まるというのだから。日本のカウンセラーがいって学んでも、それを臨床の現場で用いるには、自分でもマインドフルネスの実践をしなければ、患者に教えられない。そういう体験タイプの技法なのであるから、9日間、学習しても、すぐ臨床には使えない。しばらく、自分がマインドフルネスの実践を継続する必要がある。この実践は、微妙であるから、自分で実践していないと、患者から質問された時に、答えられない。
「インストラクターがマインドフルネス体験を直接経験していることは重要である。「知的」理解だけでは答えられないような実践上の困難を経験する患者が必ずいるからである。水泳のインストラクターは、水中で物体がどのように動くのかという物理学的知識のある人ではなく、泳ぎ方を知っている人であるということと同じである。これは、たんなる信憑性や適性といった問題ではなく、参加者が身につける態度を「内側から」体現できるというインストラクターの能力の問題なのである。
著者らの経験においても、実際に、マインドフルネスの実践経験があってMBCTを用いることと、経験なしに用いることとの違いは歴然であった。よって、少なくとも、インストラクターになろうとする人は、クライアントへの教育を始める前に日常生活においてマインドフルネスを用いることが望ましい。」(「マインドフルネス認知療法」50頁)
アメリカでの、9日間の講座を受けた人が、すぐ臨床を始めることはできないだろう。その後、数ヶ月間の実践が必要である。その実践はどうしておこなうか。わからないことが起きた時に、アメリカの講師に質問するのか。こう考えると、マインドフルネス心理療法(種々のプログラムがある。ACT,BDT,MBCT,自己洞察瞑想療法など)を提供できるインストラクターが日本全国の主要都市に配置されるまでに、10年かかるでしょう。早く対策をとれば、もう少し早く普及できるでしょう。うつ病による自殺が多いのだから、マインドフルネス心理療法を早く普及させるべきだと思います。
(注)
「マインドフルネス心理療法」は、大田が、アメリカの種々のプログラムを総称した言い方で
す。「自己洞察瞑想療法」の別名としても、「マインドフルネス心理療法」とよんでいます。マインドフルネスとアクセプタンスの両方が含まれていますが、前者で代表させました。マインドフルネス心理療法は、認知療法ではないです。認知を修正する療法ではありません。