心理療法と適応症

　心理療法には、種々の療法があるが、得意とする障害がある。主な障害について、著作で確認できる。うつ病・不安障害は認知(行動)療法および対人関係療法が有効である。不安障害は森田療法が主に用いられている。認知(行動)療法は、最近、適用できる障害の範囲が拡大している。（注⑪）

心理療法→適応症

　心理療法について論じた著作等による適応症。

認知療法	①	うつ病、不安障害(パニック障害、対人恐怖、種々の恐怖症、強迫性障害など)、自殺行動、人格障害、強迫性障害に有効
認知行動療法	②	うつ病、拒食症、ストレスへの対処、社会的スキル訓練
	③	パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害(PTSD)、児童の不安障害、統合失調症、うつ病、パーソナリティ障害。
	④	適応障害
	⑤	統合失調症
森田療法	⑥	対人恐怖症、種々の恐怖症、不安神経症、普通神経質、不眠神経症など。
森田療法	⑦	対人恐怖症、種々の恐怖症、不安神経症、普通神経質、不眠神経症など。
行動療法	⑧	パニック障害、強迫性障害、摂食障害、発達障害、統合失調症、身体（脳）疾患、ソーシャルワーク、異分化における子どものメンタルヘルス。
内観療法	⑨	摂食障害、非行矯正。
対人関係療法	⑩	うつ病（対人関係療法は「「認知療法」「行動療法」とならんで、うつ病の治療においては薬による治療と同等もしくはそれ以上の効果があることが世界中で証明されています」）

（注⑪）自己洞察瞑想療法は、一般の認知行動療法と同じ適応症とする。病理でなく健常者の予防、成長の領域でも、幅広く適用できる。（注）

①)「認知療法入門」アーサー・フリーマン、日本評論社、1989年
②「認知行動療法」坂野雄二、日本評論社、1995年
③「こころの科学」121号、2005年、日本評論社。本号は「認知行動療法」の特集である。このような障害へ適用されていることが紹介されている。
④「こころの科学」114号、2004年、日本評論社。本号は「適応障害」の特集である。57頁。
⑤「こころの科学」120号、2005年、日本評論社。本号は「統合失調症」の特集である。99頁。
⑥「森田療法」岩井寛、講談社、1986年
⑦「森田療法のすすめ」高良武久、白揚社、1976年
⑧「こころの科学」99号、2001年、日本評論社。本号は「行動療法」の特集である。
⑨「こころの科学」112号、2003年、日本評論社。本号は「拒食と過食」の特集である。44頁。
⑩「薬を使わずに「うつ」を治す本」最上悠、PHP研究所、142頁。
　「自分でできる対人関係療法」水島広子、創元社。

病気→心理療法

　どの精神疾患に、どの心理療法が効果があるか、現在、広く適用されている心理療法を文献で確認できるものを下記に示す。
　下記でわかるように、うつ病、自殺問題、パニック障害（他の精神疾患や心身症も）は、薬物療法が効を奏しない場合、認知行動療法、対人関係療法を試みることが大切である。（他の精神疾患も同様に薬物療法が効果ない場合、認知行動療法、対人関係療法を受けるべきである）（注11）

うつ病	①	認知療法、森田療法（ただし、「自殺の考えを有していたり意欲低下の著しい重症うつ状態には適切ではない」という）、サイコエデュケーション（心理教育的アプローチ）
	②	精神科、心療内科での薬物療法をすすめる。心理療法にはふれない。
	③	精神科、心療内科での薬物療法が原則。再発するおそれがある人に対して「認知療法」と「対人関係療法」を行う。
	④	薬物療法のほかに、「認知療法」と「対人関係療法」「行動療法」がある。
自殺予防	⑤	薬物療法のほかに、「認知療法」「リラクセーションの技法（筋弛緩法、自律訓練法）」「行動療法」がある。
パニック障害	⑥	認知行動療法、森田療法
対人恐怖	⑦	森田療法
拒食症と過食症	⑧	行動療法、森田療法、内観療法、家族療法、ブリーフセラピー
適応障害	⑨	認知行動療法
統合失調症	⑩	心理教育、認知行動療法
強迫性障害	⑪	認知行動療法
外障後ストレス障害（PTSD）	⑫	認知行動療法
社会不安障害	⑬	認知行動療法
児童の不安障害	⑭	認知行動療法
パーソナリティ障害	⑮	認知行動療法

（注)

①「こころの科学」９７号、2001年、日本評論社、129頁。本号は「うつ病治療の最前線」の特集である。この３しかあげられていない。その他の心理療法は、「うつ病」にはあまり用いられていないとみてよいであろう。
「こころの科学」121号、2005年、日本評論社。本号は「認知行動療法」の特集である。
②「うつと自殺」筒井末春（心療内科）、集英社、2004年。
③「「軽症うつ」を治す」三木治（心療内科）、洋泉社、2004年、143頁。
④「「うつ」を治す」大野裕（日本認知療法研究会会長）、PHP研究所、2000年、96頁。
　「薬を使わずに「うつ」を治す本」最上悠、PHP研究所、142頁、（「対人関係療法」でうつ病が治る。）
　「自分でできる対人関係療法」水島広子、創元社。
⑤「こころの科学」118号、2004年、日本評論社、49頁。本号は「自殺予防」の特集である。この西島英利氏が、自殺予防には、うつ病の治療が必要で、その療法として、これらをあげている。指示的精神療法もあげている。
⑥「こころの科学」107号、2003年、日本評論社。本号は「パニック障害」の特集である。
「こころの科学」121号、2005年、日本評論社。本号は「認知行動療法」の特集である。
⑦「こころの科学」76号、1997年、日本評論社。本号は「神経症の現在」の特集である。44頁。
⑧「こころの科学」112号、2003年、日本評論社。本号は「拒食と過食」の特集である。44頁。
⑨「こころの科学」114号、2004年、日本評論社。本号は「適応障害」の特集である。57頁。
⑩「こころの科学」120号、2005年、日本評論社。本号は「統合失調症」の特集である。99頁。
「こころの科学」121号、2005年、日本評論社。本号は「認知行動療法」の特集である。
⑪「こころの科学」121号、2005年、日本評論社。「認知行動療法」の特集。
⑫「こころの科学」121号、2005年、日本評論社。「認知行動療法」の特集。
⑬「こころの科学」121号、2005年、日本評論社。「認知行動療法」の特集。社会不安障害は、人から注目されるよな場面や、恥ずかしい思いをするかもしれない社会状況に対して強い不安を感じ、日常生活や仕事に支障が生じている疾患。
⑭「こころの科学」121号、2005年、日本評論社。「認知行動療法」の特集。
⑮「こころの科学」121号、2005年、日本評論社。「認知行動療法」の特集。

（注⑪）自己洞察瞑想療法は、一般の認知行動療法と同じ適応症とする。病理でなく健常者の予防、成長の領域でも、幅広く適用できる。