新しい心理療法の呼称
アメリカでは、行動療法が第3世代にはいったといわれるが、そこには、瞑想が用いられるのが、特徴である。その瞑想は、マインドフルネスとアクセプタンスの要素がある。これらは、思想や理論ではなくて、心理的な「実践能力」や「行為への実現能力」である。予防、再発防止まで視野にあり、ある期間だけの実行ではなくて、生涯実行されるべき生き方までも含む壮大な心理療法である。瞑想(呼吸法、現在感覚行動に意識集中、つらい思考・感情などを受け入れて放つ、など)が多用されるので、この心理療法には、「瞑想」の語を入れたい。
アメリカでもこのような瞑想・生活スタイルを付加した新しい療法に、まだ、名称が固定しておらず、それぞれの研究者が名称をつけている。ACT、弁証法的行動療法、マインドフルネス認知療法、などのように。これらを総称した名称は、まだ、決まっていないようである。マインドフルネス認知療法といえば、アクセプタンスの要素が名称にない。「アクセプタンス・マインドフルネス認知行動療法」(AMCBT)となるのかもしれない。
私どもの心理療法も、アメリカの新しい心理療法に似ているのであるが、アメリカがヴィパッサナー瞑想(東南アジアの仏教に伝えられていた)から入ったのと異なり、日本の「禅」の実践(呼吸法、現在感覚行動に意識集中、つらい思考・感情などを受け入れて放つ、など、日本の禅の一部に伝えられていた実践)から入った。別な実践から始められたが、どちらも、本来の仏教(思想ではなくて実践=マインドフルネス、アクセプタンス)を参照している。総じて、同じとみてよい。多少の技法の違いがあるが、重要な「精神疾患にある苦悩を維持する反応パターンを克服する心のスキル」向上の技法が共通であるか、または、類似する。アメリカの流れと、私どもの流れは、一つである。いつでも、合流できる。禅を参考にしたが、宗教色がなく、病気を治療する心のスキルのみの範囲である。森田療法や内観法も、禅や仏教を参照したのと類似する。
自己洞察瞑想療法士(マインドフルネス心理療法士)
このカウンセリング技法を学ぶ人が増えてきたので、資格の認定の必要もあり、これを行うカウンセラーの呼称をさだめることにした。
「内観」は、もともと、浄土真宗の宗教実践であったが、今は、もう「心理療法」として認知されている。
アメリカの新しい流れが、日本にも導入されて、日本語の名称(「行河療法」という名称が提案されているというがわかりにくい)が心理学者からつけられるかもしれない。「マインドフルネス・アクセプタンス認知行動療法」となるかもしれない。だが、資格名称として「マインドフルネス・アクセプタンス認知行動療法師(士)」では、長すぎる。マインドフルネスは現在感覚行動への注意集中であり、アクセプタンスは受容であり、邦語に置き換えて、「注意集中・受容・瞑想療法」でも何かしっくりしない。
この新しい心理療法の特徴を示す簡潔で、妥当な日本語名称がまだない。心理学界が、名称をつけるまで、「自己洞察瞑想療法」「マインドフルネス心理療法」と呼ぶことにする。マインドフルネスもアクセプタンスも、「瞑想」にある要素である。しかし、瞑想にも種々あって、自分の精神活動をよく洞察する瞑想であるから、自己洞察瞑想でいいだろう。そこで、自己洞察瞑想療法と呼ぶ。
(「洞察」とは物の本質・事情・原因などを深く見抜くこと。瞑想によって自己を洞察する。それで心理的問題、精神疾患の解決をはかる。英語で”SIMT”, Self Insight Meditation Therapy )
療法の名称と、資格の名称は別でもよい。資格名称は、各団体で独自にきめてよい。私どもの資格の名称は「自己洞察瞑想療法士」(略称:瞑想療法士、別称、または、ニックネームとして「マインドフルネス心理療法士」)とする。資格認定を始めた。
新しい療法で社会問題の支援を
この心理療法は、日々、改善改良されていくので、新しい動向に注目しないと陳腐化するおそれがある。研究会や合宿に参加して、新しい療法の動向、療法士の活動における実際の適用活動を学ぶ機会をもちたい。このような活動を長く行うためにも、これを推進していく、新しい療法を学ぶ人が、多く出現してほしい。クライエントの近くにいないと効果的な指導ができないので、全国に必要です。だから、各県に、最低、一人の「自己洞察瞑想療法士(3級)」が、そして、他のカウンセラーを養成するのも、継続の講座を行うので、やはり、近くでないとうまくいかない。マインドフルネス心理療法のカウンセラーを育成できる人も、各県に、最低、一人はほしい。そうでないと、学ぶのに費用(交通費、時間)がかかる。
こういう人が、養成されれば、多くのクライエントを扱うことができるので、大規模な、臨床試験(アメリカで、「無作為統制試験」とよばれているような)を行い、各障害、問題に最適の手法が開発されていくでしょう。この領域は、なすべきことが、山ほどあります。たとえば、基本的な自己洞察法は行うとしても、自殺念慮の強い患者、うつ病の重症者、うつ病が長引く人、仕事をやめずにうつ病を治したい人、パニック障害、対人恐怖症、PTSD、統合失調症、パーソナリティ障害、過食症、虐待、非行・犯罪の再犯防止、などには、どのように改良した手法が最善か、通院方式と入院(合宿)方式は、どのように(自己洞察法手法、心理教育、期間は?)行うのが最善か(治療者、クライエントの両方のコストを考えて少ない費用で多数を治療できる方式)。不登校、ニートの方への支援法は、等々、試験的に行うべき課題が山ほどあります。従来のカウンセリング技法では、治らない方を対象とするので、新しい心理療法を用います。
従来の療法、現状の社会の問題の解決のために何かしたいと考えておられる方は、ぜひ、参加していただきたいと思います。いずれ、日本の心理学者が、アメリカ流れの療法を輸入するでしょうが、その時には、合流できます。でも、認知療法がそうですが、外国流を翻訳されたままでは、日本人には、しっくり行かない技法もあります。日本独自の方法を研究していく価値はあります。森田療法、内観法も、日本人がはじめた療法です。自己洞察瞑想療法(マインドフルネス心理療法)も日本人がはじめた心理療法です。
心の病気、自殺、不登校、ニート、非行犯罪、虐待、熟年離婚、心の病気とストレスによる身体の病気により医療費の圧迫、ターミナル・ケア、など種々の問題の一部にかなり貢献できそう(種々の現場での適用がすんでいないし、統制群との大規模な比較研究がまだされていない)ですから、他の動きを座視して待たず、行動を開始しましょう。